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美術市場の今後方針「アート市場の活性化に向けて」文化庁2018/4/17資料

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行政は日本の美術市場が世界のレベルに遅れをとっていると認識しているようで、「アート市場の活性化に向けて」という意見書を文化庁が018/4/17に資料として公示しました。何が問題でどう変えていこうとしているのが見てみましょう。

経済規模からすると日本市場占有率は低く3.6%

世界の美術市場は2017年で637億ドル(約6兆7,500億円)(出所:「The Art Market 2018」Art Basel and UBS)でシェアベスト3は次の通りです。

  1. アメリカ:2.84兆円(41%)
  2. 中国:1.42兆円(21%)
  3. イギリス:1.35兆円(20%)
    (1ドル=106円換算)の3国で80%以上

日本の美術市場規模は 2,437億円で世界市場の僅か(3.6%)しか占めていません。

注釈
美術市場にカウントされる売上は、画廊・ギャラリー、百貨店、アートフェア、美術品のオークション、ミュージアムショップ、インターネットサイト、作家から の 直接購入された美術品をさします。美術品とは、日本画、洋画、彫刻、版画、現代美術、写真、 映像作品、陶芸、工芸、書、掛軸・屏風のことです。

 

日本の美術市場は拡大できる

日本のGDP(国内総生産)4兆9365億ドルで世界3位(出所:IMF2016年)である。その上、100万ドル以上の資産を持つ富裕層の人口は世界2位で、269万3000人います。(出所:クレディスイス「グローバルウエルネスレポート2017年)このことから日本にはまだ美術市場を活性化させる余力があります。

 

美術市場を担うコレクターを増やすための3本柱

美術市場の拡大にはコレクターを増やすことが肝心です。コレクター増加にはアートフェアー、美術館、オークションの3つの機関が関連して市場を牽引していくことが大事です。それぞれの機能を見てみます。

アートフェアー

アートバーゼルを頂点に作家とコレクターを繋ぐ重要性が増している。(プライマリーギャラリー)

美術館

作家を正しく評価することでコレクターの獲得に寄与しアート市場の活性化につながる。キュレータが美術展を主導することで作家の発掘、育成、オールドマスターの市場の安定につながる。

オークション

サザビーズ、クリスティーズなどで市場価格が公開され価格に透明性が生まれ多くのコレクターが安心して参加できるアート市場が確保され、活性化、拡大する。

美術館への寄託の促進(平成30年度新規税制改正)

重要美術品が美術館に集まる税制上の改正です。
「国宝・重要文化財・登録有形文化財(美術工芸品)」について、相続税の納税猶予の特例を創設し、それら美術品が、美術館に寄託される、またすでに寄託され、寄託し続ける場合、相続人は相続税の納税義務を猶予されます。

 

3本柱による今後のアート市場のあり方

アートフェアーを大規模に開催し、そこから多くのコレクター(個人・企業)や美術館が購入するような主要な展示販売場としていく。

コレクター(個人・企業)から美術館に、優れたコレクションを寄付・寄託してもらうために国は優遇税制を特設していく。美術館が作家の評価をすることで作品の流動性があがることを目指す。

オークションが美術品の売買のお重要な機関となり、より多くの資金が流入し、美術館も資金の調達のためオークションを利用する。

 

今までの日本の美術市場の2つの問題点

  • 美術館は作品収集や展覧会・研究論文で作家が正しく評価される基盤をつくり、その価値基準が作品の値付けをするという重要な機能があるが、作家の評価付けが不鮮明で新規コレクターが参入しにくいかった。
  • 新規コレクターがオークションを活発に活用しないことで第二次市場が不活発となり美術品が資産として流動していく公正で透明性が高い基準作りができなかった。

今後美術館に求められるの2つの活動

  • 海外のコレクターに日本の近代現代美術に興味を持ちコレクションにてくれるよう国際的な評価を高める研究や展覧会、論文の発表などの活動をする。
  • 有望若手作家の積極的な展覧会をし研究論文を公表し積極的に作品収蔵する。

美術館が新規購入作品の代金のために収蔵作品をオークションで売れる。コレクターが美術館に寄贈することで相続税の特例措置を受けられる。の2点が本当に実現できれば画期的に開かれた美術市場ができそうです。

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