世界事情

好景気のはずが、どうした海外で閉店が相次ぐ老舗ギャラリー

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世界中で開催される大規模なアートフェアーやサザビーズ、クリスティーズの2大オークション会社の売上好調のニュースなど市場規模が拡大し躍進しているかに見える美術業界ですが、その反面、ニューヨーク・ロサンゼルス・ロンドンで長年影響力をもって活動してきた中規模の老舗ギャラリーが相次いで閉店する事態となっています。この気になる記事がニューヨークタイムズで掲載されていましたのでご紹介します。いったい何が起こっているのでしょう。

「The New York Times」2017/8/14記事より

最近(2016年前後)閉店した老舗ギャラリー情報

CLOSED 影響力のあった老舗ギャラリー(ニューヨーク)

「On Stellar Rays Gallery」 (ニューヨーク・ローワーイーストサイド)

「Andrea Rosen Gallery」(ニューヨーク・ウェスト24丁目)

「「Mike Weiss Gallery」(ニューヨーク・チェルシー)

「CRG Gallery」(ニューヨーク・ローワーイーストサイド)

「Laurel Gitlen Gallery」(ニューヨーク・ローワーイーストサイド)

「Murray Guy」(ニューヨーク・チェルシー)

「Kansas, Team Gallery」

「Feuer/Mesler」(ニューヨーク・ローワーイーストサイド)

「Lisa Cooley」(ニューヨーク・ローワーイーストサイド)

CLOSED 影響力のあった老舗ギャラリー(ロサンゼルス)

「ACME Gallery」(ロサンゼルス・エリシアンバレー)

「mark moore gallery」(カルフォルニア州カルバーシティー)

CLOSED 影響力のあった老舗ギャラリー(ロンドン)

「Limoncello Gallery」(イーストロンドン)

「Vilma Gold」(イーストロンドン)

「MOT International」(イーストロンドン)

老舗画廊を閉店に追い込んだ主な要因

閉店に追い込まれた深刻な要因は大きく四つありそうです。
ギャラリーを閉めたとはいえ美術業界に止まり精力的に仕事を続けて行かれる人も多いのです。
スペースとして中小規模の画廊の存在意義が薄れてきているのです。
優れた作家が世にでるための、ゆりかごのような環境が失われているのです。
将来に向けて大きな不安要因です。

① 地域の再開発による家賃の大幅上昇

  1. 地域の再開発による移転・家賃の高騰が負担になった。

② 顧客が減少している

  1. ギャラリー顧客がネットで美術品を買うようになった。
  2. 顧客は毎月のように開催されるアートフェアーでしか買わず、ギャラリーに訪れる愛好家がめっきり減ってしまった。それにより急激に売上が低下に対処できなかった。
  3. 購入を「好き」「嫌い」で即座に判断する傾向が強く、じっくり吟味して購入を決めていた時代から大きく変化してしまった。

③ アートフェアー中心の運営と参加費用の高額化

  1. 参加する規模、場所によるが、数百万〜数千万円もの費用が毎回かかる。
  2. アートフェアーでの売上が主となっている。
  3. 毎回のアートフェアーの準備が大変。
  4. 仕事がアートフェアー中心になりギャラリストとしての本来の喜びが感じられなくなった。

④ 世界を席巻するMEGA画廊との競争の激化

  1. メガギャラリーとの競争の激化し、対抗上広い展示スペースの確保が必要となり結果家賃負担が重荷になった。

1988年にパルコ出版から「アートディーラー」という本が出版された。抽象表現主義からポップアートの大きな流れによりアメリカが世界の美術の中心となり、新しい流れを創るアーティストを中心に、評論家・美術館キュレーター・コレクターが渾然なり輝かしいエネルギーを放出していた時代の本だ。名物ギャラリストのレオ・カステリやメアリー・ブーンほか伝説の画廊主人が30以上のその時代を象徴するような個性豊かな画廊主人の生の声をまとめた本だ。その本で語られている魅力的な人々が織りなした人間臭いその時代が終わったのである。国家予算並みのマネーを動かすコレクターが牛耳る美術市場がなにをしでかそうとしているのか。二度とないであろう狂気の時代の証人となろうとしていることに胸躍る思いだ。

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