西洋の美術館の基準は温度20~22℃、湿度50-55%の範囲を理想としています。世界の国宝を集め展覧会を開催している国立西洋美術館はこの西洋の基準にそって温度21℃・湿度53%に設定しています。
浴室からの湯気とその通り道、玄関からの冷気、結露に注意
家屋の中での展示保管を考えてみます。飾る場合で特に注意が必要な場所は玄関です。玄関は外気が流入する場所ですので温度変化や湿度変化が一番激しい場所です。日本画の作品にシミやカビが発生し修理依頼を受ける作品の多くは玄関に飾られています。
湿度を気にする時に考慮すべきは湯気が立つ場所です。発生した湯気は天井付近を伝わって広がっていき冷まされて下降します。
湯気の発生場所の1番は浴室です。お風呂からの湯気の移動を考えて保管場所を決めることが大事です。
作品保管はクロゼットとか押入れが一般的です。原則はそれらの場所の床から高い位置、押入れやクロゼットの上段、理想は天袋です。2階建のお宅なら1階より2階の方が湿度は大方低いでしょう。ただお風呂が2階にある場合1階にされるべきです。
地面から上がってくる湿気は昔のお宅より少なく、お風呂より伝わってくる湯気から湿度が上昇する場合が多く見受けられます。お風呂からの湯気の通り道や湯気が冷やされる玄関や窓に美術品を保管していたり飾ってあると、額の内部に湿気がこもりカビの原因となります。
今の家屋は密閉性が高いので空調やサーキュレーターなどで空気の流れを調整してやることも大事になります。目安は人間が快適に暮らせる環境が美術品にも快適であるということです。蒸し暑い、締め切っていて空気が淀んでいる状態が長く続くと危険です。
そうは言っても10年20年と経過すればカビやシミがでるのは自然のことです。頻繁に修理しますと色が抜けたりしますからある程度状態がひどくなってきたら修復し軸や額の取り替えやメンテナンスをすることをお勧めします。
紫外線ですが版画の場合は注意が必要です。長期間かけっぱなしにしておくと紫外線による赤・黄色・緑色の退色の危険があります。額に付いている通常のアクリル板も紫外線をかなり吸収してくれますが紫外線の漂白作用にプリントインクは構造上強くはありません。